新版 屋内でみられる小蛾類

〜食品に混入するガのプロフィール〜



 那須義次・広渡俊哉 著

     B5判 174頁 口絵カラー 定価 2,600円(税・送料別)兜カ教出版

 本書のもとになったのは、2004年に出版された初版の「屋内でみられる小蛾類—食品に混入するガのプロフィール」です。当時は品質管理の重要性が認識されてきたせいか、私たちガ類の専門家に食品等に混入する種の同定依頼が増えていました。送られてくる検体は、たいてい鱗粉がとれたものですから、図鑑で斑紋を比べて同定するのは困難です。そのような場合、交尾器の形態を調べることによって同定が可能になることが多いのですが、いくら交尾器を観察できても、日本には屋内でみられるガ類の交尾器をまとめて図示した参考書がないことに気づきました。そうした中、高木良吉氏(環境管理技術研究会・文教出版)に依頼されて、2000〜2002年に、雑誌「環境管理技術」に食品に混入する種を中心とした「屋内でみられる小蛾類」についての連載を広渡が担当することになりました。内容は、屋内でみられる小蛾類について毎号1種ずつの成虫の全体図と交尾器を図示し、その昆虫に関連した話題を提供するというものでした。初版では、合計16回にわたったこの連載をとりまとめ、16種を紹介しました。
ところで、食品に混入するガ類、すなわち食品や衣類を直接食べて加害するのは成虫ではなく幼虫です。しかし、幼虫はお互いによく似ており、形態の違いなどは一般的にあまり知られていません。そこで、那須が2015〜2017年に、「屋内でみられる小蛾類の幼生期」と題して、同じく「環境管理技術」に毎号1種ずつの幼虫と蛹について連載することになりました。そして、この16回にわたる連載が終了した後に、成虫と幼生期の情報を合体した「新版 屋内でみられる小蛾類—食品に混入するガのプロフィール」の出版を企画するに至りました。新版では、合計28種以上の屋内でみられる小蛾類を紹介し、同定の助けとなるように成虫、幼虫および蛹の絵解き検索を追加しました。交尾器を含む成虫の形態だけでなく、幼虫や蛹の形態や識別点についてもできるだけ解説しました。
DNAバーコーディングなど、分子情報によって同定が可能になった現在においても、幼虫や成虫の形態に関する情報は、大きな誤同定をしないためにも重要であると考えます。本書が、食品の品質管理などの現場で、ガ類の同定に関わる方々のお役に立てるとともに、一般の方にもいかに多くのガ類が屋内でみられるか、またそれらはどのような生態をもっているのかを知っていただければ幸いです。

 最後に、大阪府立大学の吉安裕氏、ならびにイカリ消毒(株)の木村悟朗氏には、新版の草稿全体に目を通していただき、いろいろと貴重なご意見をいただきました。食品総合研究所の高橋敬一、池長裕史、宗田奈保子、宮ノ下明大、今村太郎の各氏には初版の当初から貯穀害虫の材料や文献をご提供いただくなどお手を煩わせました。新版の作成に関しては、農業環境変動研究センターの安田耕司氏、西部化成(株)の篠田一孝氏、大日本除虫菊(株)の大野泰史氏、富士フレーバー(株)の鏡味知里、小山良子の両氏、およびイカリ消毒(株)の富岡康弘氏からも材料の提供や文献の紹介を受けました。斉藤寿久氏には、ガ類の写真を提供頂きました。最後に、文教出版の高木良吉氏には長らく食品の品質管理関係でお世話になり、本書の出版を進めていただきました。あわせて厚くお礼申し上げます。(はじめに より)

目 次
はじめに
T.屋内で発生する小蛾類点線 ・ U.形態の特徴と観察 
V.各種の解説 
メイガ類 Pyralids
 (1) ノシメマダラメイガ Plodia interpunctella (Hübner) 
      コラム1:メスのフェロモン 
         コラム2:「えっ、こんなところに」@
 (2) スジマダラメイガCadra cautella (Walker) 
     コラム3:オスのフェロモン 
      コラム4:「えっ、こんなところに」A
 (3) スジコナマダラメイガEphestia kuehniella (Zeller)  
   コラム5:近縁種と学名 
 (4) チャマダラメイガ Ephestia elutella (Hübner) 
   コラム6:同定とタイプ標本 
 (5) イッテンコクガ Paralipsa gularis (Zeller) 
     コラム7:シーボルト標本 
 (6) ガイマイツヅリガ Corcyra cephalonica (Stainton) 
   コラム8:消化酵素活性と食性
 (7) カシノシマメイガ Pyralis farinalis (Linnaeus) 
        コラム9:鼓膜器官 
(8) ネグロシマメイガPyralis pictalis (Curtis) 
 (9) コメノシマメイガ Aglossa dimidiata (Haworth)
      コラム10:発音器官 
キバガ類 Gelechioids
 (10) バクガ Stitoroga cerealella (Olivier) 
   コラム11:バクガの英名
   コラム12:天敵も厄介者 
 (11) ジャガイモキバガ Phthorimaea operculella (Zeller) 
 (12) ミツモンホソキバガ Oecia oecophila (Staudinger) 
 (13) コクマルハキバガ Martyringa xeraula (Meyrick) とニセコクマ
ルハキバガMartyringa ussuriella Lvovsky 
 (14) トウモロコシトガリホソガ Anatrachyntis rileyi (Walsingham)
ヒロズコガ類 Tineids
 (15) イガ Tinea translucens Meyrick
       コラム13:イガの近縁種
 (16) コイガ Tineola bisselliella (Hummel)
    コラム14:コイガの英名と学名
 (17) ジュウタンガ Trichophaga tapetzella (Linnaeus) 
       コラム15:カーペットを食べるが 
 (18) ウスグロイガ Niditinea tugurialis Meyrick と近縁種
 (19) アトウスキヒロズコガMonopis crocicapitella (Clemens) 
(20) マエモンクロヒロズコガMonopis longella (Walker) 
  (21) ナガバヒロズコガCephitinea colonella (Erschoff) 
 (22) クロテンオオメンコガOpogona sacchari (Bojer) 
 (23) アトボシメンコガWegneria cerodelta (Meyrick) 
 (24) コクガ Nemapogon granella (Linnnaeus) 
     コラム16:学名と命名規約 
その他のガ類 Other moth
 (25) コナガ Plutella xylostella (Linnaeus) 
  コラム17:交尾器の進化仮説 
W.絵解き検索
成虫の検索表
幼虫の検索表 
蛹の検索表 
X.参考文献 

 

 

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